「小利大安」の有機農業を目指して

有機農業のこれから

少し前に「有機農業は誰のものか」という雑誌を読んだ。
まあ読んだといってもパラパラといった感じだが、
農家、流通業者、学者や議員など様々な立場の方が書いている。
今年の四月に有機農業推進法による国家助成金が全国45の団体に支払われ、
長らく「異端の少数派」であり、
「理想優先の社会運動派」と見られていた日本の有機農業は国策として認知されて、
次の段階に入り始めた。
僕はこの世界では入りたての新参者なので勉強不足のところもあるだろうが、
これからの有機農業のあり方を畑を耕しながら考えたりしている。
スーパーマーケットに大きく商品が並ぶような時がくるのだろうか?
サービス的観点、有機を広めるというのであれば結局巨大流通の流れに飲まれていくのだろうか。
野菜も買い叩かれて、農家もこれじゃやっていけない・・というんじゃ今と変わんねえじゃん!!
実際千葉県山武の農家の原価計算表が出てたが、春大根10a作付けで50万の赤字である。
ここはどこに出荷してるのかは書いてなかったが、大根一本100円で卸していた。
消費者に届く時は200円らしいので、半分は流通業者に持っていかれるのである。
しかし無農薬大根が100円とは安すぎる。
民俗研究家の結城登美雄さんは「百姓をやっていける値段を百姓が決められるようにならなきゃだめだ」と言っていた。
売る奴が偉くて作る奴は冷や飯を食わされる。
どの業界もそうだが有機農業界にも市場の波が来てしまうのだろうか。



地産地消身土不二という基本

「国の有機農産物自給率を上げよう」的な発想からは市場原理に追い回される。
過剰在庫処理と高値売買のため都市部に卸が集中するからだ。
結局今の市場機能が一番の消費者サービスになるのだろう。
やはり基本は「その土地で採れたものをその土地で消費する」という地産地消型の自給率UPであり、
露地栽培による「旬のものを食べることによる医食同源」という身土不二的な考え方である。
各地域の自給が上がって結果的に日本の自給率が上がりましたというのが一番望ましいのではないか。
理想論かも知れないが気づき出している人は増えてきているし、土台から作り直す必要を感じる。
なんにしても日本という大きな単位ではなく地域の自立したコミュニティーを再構築し、
その中で有機農業のあり方を模索していくべきである。



鴨川自然王国での実践と模索

「小利大安、有機農業はそれでいい。」
埼玉県小川町で30年以上有機農業を実践する金子美登さんの言葉である。
我が鴨川自然王国は(というか俺が)この理念をリスペクトし実践している。
「顔の見える関係」は今のところ、この昔から続く産直方式が最善だと思う。
スーパーで顔写真置いてれば「顔の見える関係」だろうか。
間に人が入れば入るほど「顔は見えなくなる」。
最近よく耳にする有機認証団体の不祥事を思い起こせばわかる。
この仕事は利幅が薄く仕事が多いので手を抜きたくなる気持ちもわかる。
が、結局「認証」などという他人任せでは安全は確保できないのではないか。
一軒の農家が40件の消費者と提携し、
一軒1万円で一月40万とすれば、経費を引いても何とか暮らせる。
これこそ「小利大安」であり、消費者にとっては安全安心であり、
このような百姓を増やし、このような消費者を増やすことこそ本当に必要なことだと思っている。


国際機関「開発のための農業技術評価」(IAASTD)も
21世紀の目指すべき農業形態は小規模経営の有機農業だと言っているらしいが、
根本的な部分を見誤るとグローバリズムに食い散らかされるだけである。
百姓が正しい眼で見定めていくことで、次世代の有機農業の方向を大きく左右していくのだろう。


以上。       藤本ミツヲ